清々しい程に、ボクは面食いである。
自分では隠しているつもりだが、顔にモロ出ているのだろう。
好意を寄せている人が周りによくバレていた。
鏡で見たくない表情をしていたに違いない。
ボクの人生の中で、とびっきりの「キセキ」がいくつかあったが、
ツマに結婚してもらえた事はその代表だ。
人を好きになると、もう本当に四六時中その人の事ばかりを考えていて、
いろんなモチベーションがグーンと上がる分かり易い男である。
そんな相手に結婚してもらえたのだから、もう感謝と幸せしかない。
ちなみに、ツマは女優の宮沢りえ氏に似ているとボクは思っており、
日々、ウフフと思っている。
違う、ノロケ話をしたいのではない。
どんなツマかひとことで言うと、
「邪気がない」
と、ボクは思っている。
ズルイことや悪いことを考えず、打算的ではない。
はっきり言って、ボクより男らしい。
なんともいい性格である。
だから違う、ノロケ話をしたいのではない。
ツマにプロポーズをした日の事をよく覚えている。
相手はもっとよく覚えているだろう。
その日、ボクはプロポーズをすると決めて家を出た。
ツマと待ち合わせ場所で会い、そのまま昼食をしにお店に入った。
頭の中は「どうやってプロポーズをしようか」「どこで言おうか」
そんな事がグルグルと回っていた。
オシャレなランチがあるお店に入ればよかったものの、
ボクが選んだのは、近くにあったスタミナ丼、通称「スタ丼」。
気が利かない男である。
しかし、店を選んでいる余裕などなかったのだ。
店に入り、二人でスタ丼を注文した矢先、ボクの口からこぼれ落ちるように、
プロポーズの言葉が出てきてしまった。
ヨダレかよ。
ツマは一瞬何が起こったか分からず絶句。
誰もいない店内。
スタ丼を準備する音だけ静かにこだましていた。
残念なプロポーズの一例を見事に演出したのだった。
これでOKしてくれたのだから本当にキセキなのだが、
ボクにとって涙が出る程嬉しかったのは、
ウツとの共同生活を快諾してくれた事だった。
どんな結婚生活が待っているか大体予想がつくだろう。
まず、裕福な暮らしは出来ない。
それどころか、暮らしていけるかも際どい。
もう病気だと分かっている人間と生涯を共にする勇気と愛情はどんなものか。
今でも、ふと考えては深い深い感謝の念に圧倒される。
そしてボクを更に感激させたのがツマのご両親だった。
結婚の挨拶におじゃました時、ボクはウツも一緒に連れて行った。
恥ずかしかったし、不安だったけど、
ヤツ抜きには、本当のボクを知ってもらえないと思った。
ボクは正直にすべて話した。
28歳でアルバイトの身であること。
貯金が全然ないこと。
ウツという友達と一緒に生きているということ。
そして、ウツが本当に大切な事をボクに教えてくれていること。
全部話し終えた後、
静かにボクの話に耳を傾けてくれていたツマのお父さんが、
目に涙をためながらこう言った。
「宝物を手に入れたようなものだね」
その時の感謝と感動は生涯忘れる事はない。
ボクは、周りの人によって支えられている。
生かされている。
違う生き方を望んでいたが、
ウツが本当に大切な事を教えてくれたのかもしれない。
ツマよ、ボクと結婚してくれてありがとう。
よっぽどボクが魅力的だったんだね。
結局、ノロケ話だったわけで。
すみません。
今日も、「ウツボク」に来てくれてありがとうございます。
近くにいる人程、大切にしなければいけない。
そう思う今日この頃です。