「手ごわい」
今のムスメに対するボクの率直な気持ちである。
来年の2月でムスメは3歳になる。
そう、今まさに「イヤイヤ期」真っ盛りなのだ。
いや、もしかしたら、そういう性格なのかもしれない。
日本語では「イヤイヤ期」と、ちょっと可愛らしい言い回しだが、
英語では「terrible twos(魔の2歳児)」というらしい。
なんかもっとやばそうだ。
しかも、3歳児は、
「horrible threes(ゾッとするほど嫌な3歳児)」というらしい。
ああ、頭痛がしてきたよ…。
子育ての先輩方も、大いに苦労をされ、多くを学ばれたことだろう。
たくさんのお子さんを育て上げた、あるベテランお母さんに当時の事を尋ねたら、
「記憶がない」
という答えが返ってきた。
かけがえのない経験であると共に、
子育ての過酷さを短く表した、含蓄のあるインパクト抜群の一言だ。
もちろん、こどもはそれぞれ個性があるし、
親の感じ方も人それぞれだ。
当然、一概には言えない。
が、あの屈強なツマが日々苦戦しているのを目の当たりにすると、
やはり挑み甲斐のある闘いなのだと思う。
ボクがムスメを「手ごわい」と感じる理由のひとつに、
ムスメとウツの不仲がある。
不仲というか、ムスメがウツを一方的に嫌っている。
仕方がないことだ。
理解しろという方が難しい。
ムスメ、ウツ、ボク、三者それぞれに苦労があるだろうが、
板挟みになっているボクが一番しんどいという自信がある。
エピソードは限りなくあるが、
ここ最近の一番の悩みは「ストライダー」だ。
そう、街中や公園でちっちゃい子が乗り回している、
あのペダルのない自転車みたいなやつ。
我が家も、最近入手した。
はじめは、おぼつかない足取りでストライダーを漕ぐムスメが、
なんとも可愛らしかった。
しかし、先日、久しぶりに一緒にストライダーで散歩に出かけると、
スピード、ハンドリングが以前とは桁違いに上達しており、驚かされた。
ストライダー、しっかり乗り回してるやんけ。
その日、一緒にストライダー散歩をしたのが楽しかったらしく、
それから毎日、
「ねえ、ぱぱあ、すとらいだあ、いこうよおう」
とリクエストするようになってきた。
もちろん、気持ちとしては毎日でも付き合いたい。
が、こちらにはそうもいかない事情があり。
ウツが妬くのだ。
家で寝っ転がってろ、と。
しかし、ムスメからしたら、
「いやいや、寝っ転がってんなら外行けるやろ?
てかなんでいつも家におるん?」
と、内心思っているはずだ。
少し脱線するが、先日、ムスメが友達と遊んでいた時、
友達にこう尋ねたらしい。
「(きみの)ぱぱ、おうちでねんね?」
ムスメ、多分、その子のパパはおうちでねんねしてない。
お仕事してるぞ。
ちなみに、ボクがパソコンやスマホをいじっている時は、
「おしごと」をしていると今のところ信じ込ませている。
明らかにゲームをしているのに。
「ぱぱあ、おしごとがんばってねえ」
とか言われると罪悪感でしぼみそうである。
完全に墓穴を掘った。
話を戻すと、
ムスメのストライダー放浪に付き合うには、
今のボクにはなかなかのエネルギーを必要とする。
「パパね、今日は病気だから難しいんだ。ごめんね。」
と丁寧に説明しても納得出来るはずもなく。
「すぅとぉらぁいだあああああああああああああ!!!!!!」
と爆音で泣き叫ぶのである。
それもかなりの時間。
その度に、情けなくなり、不甲斐ない気持ちになる。
この子とストライダーで散歩にも行けんのか。
ウツも申し訳なさそうに、ボクの袖を引っ張っている。
そう、キミの気持ちも分かる。
分かるのよ。
最近、こんなことで葛藤を繰り返しているボクなのだ。
しかしまあ、ムスメの寝顔を見ていると、
静かに静かに、愛おしい気持ちが心を包み込む。
ああ、かわいいなあ。
最近はおしゃべりも達者になり、質問責めにイラつく日々だが、
はじめてムスメが言葉を発した日をボクは覚えているだろうか。
本当に嬉しくて、可愛くて、愛おしくて。
この子と会話が出来たらどんなに楽しいだろうと思った。
いつまでも話を聴いてあげたいと思った。
はじめて一人で歩いた日、
はじめてハイハイをした日、
はじめて寝返りをした日、
はじめて笑った日、
そして、
ムスメが産まれてきてくれた、
あの大切な日のことを、
ボクは覚えているだろうか。
残念ながら、記憶は上書き保存されていく傾向にある。
しかし、出来る限りフォルダ別に保存をしたい。
そして、時々、じっくりじっくり眺めたい。
ひとつひとつていねいに。
そしたらきっと「今」をもう少しだけ大切に、
ていねいに生きられるのかもしれない。
ムスメよ、産まれてきてくれてありがとう。
明日もきっと「すとらいだあああ」って言うんだろうナ。
今日も、「ウツボク」に来てくれてありがとうございます。
「育児」ではなく「育自」だと言うが、
本当にその通りだと感じ始めている。