ツマとムスメとウツボク

いきるってたいへん。でも、すばらしい。

あなたへ

ここ数日、ボクのウツが元気です。

 

ということは、ボクはあんまり元気ではないわけで。

 

そんな時、ボクはあなたに手紙を書きたくなるようです。

勝手ですが、今日も、お手紙を書かせて下さい。

 

この「一進一退」ということば、

ボクは、ウツくんと仲良くなってから知りました。

 

意味としては、文字通り

「進んだりあともどりしたりすること。また、よくなったり悪くなったりすること。」

 

これが、ボクにはどうにも苦しかったのです。

正直、いまだに苦しい。

 

病気や怪我には、本当に色々なものがあります。

軽症なものから、重症なものまで。

 

例えば、擦り傷。

 

これは、よっぽど酷くない限り、「だんだん」良くなります。

少しづつ治っていくんです。

 

つまり、完治までの見通しがだいたい分かる。

 

もちろん、傷口は痛いですが、だんだん痛みは引いていく。

今日より、明日、明日より明後日と、回復していくわけです。

 

でも、このウツくんは、なかなか厄介者で。

 

「回復」という屋上を目指して、

階段を一段一段、ゆっくり、丁寧に丁寧に登っていく。

 

ああ、遠くの方に、やっと「回復」が見えてきた…。

なんて思っていた矢先、うしろから足を「ガシっ」とつかまれ、

ずりずりずりずりずり…。

 

あーあ、またずいぶん下まで連れて来られちゃったよ…。

 

もっと悲しいのは、

やっとこさ屋上の「回復」にたどり着いて、

その美味しい空気や、綺麗な景色を堪能しているところに、

 

階段のドアがギーッと開き、また足を「ガシっ」とつかまれ、

ずりずりずりずりずり…。

 

あーあ…。

っていうか、まだいたのねキミ…。

 

こんなことの繰り返しが「一進一退」というのでしょう。

 

これが続くと、もう本当に嫌になるし、

自暴自棄になったり、

階段を登る気が失せます。

 

まるで、「呪い」のように感じるんですね。

 

でも、よくよく静かに考えてみると、

世の中に「一進一退」のことって、少なくないなと思うんです。

 

たとえば、こどもの成長。

 

今日、はじめて、トイレでおしっこができた!

親も本人も、うれしいわけです。

 

でも次の日は、おもらししちゃたりする。

 

真っすぐな成長曲線を描いて大きくなるこどもは、まずいないでしょう。

 

「昨日出来たことが、今日出来ない」

 

今回、ラグビーワールドカップから影響を受けて、

久しぶりに五郎丸選手がプレーしている姿が見たくなりました。

 

動画を探していると、

ワールドカップ2015に臨む、五郎丸選手のドキュメンタリーを見つけました。

 

五郎丸選手の代名詞といえば、

ルーティンと呼ばれる独特のポーズから蹴り出される、

正確無比な「プレースキック」(バーとバーの間にボールを蹴り込む)

 

その成功率は、80%を超えるそうです。

 

そのドキュメンタリーでは、

五郎丸選手の「キックの苦悩」について取り上げられていました。

 

昨日まで成功し続けていたキックが、ある日突然入らなくなくなる。

 

ワールドカップを迎えるその日まで、試行錯誤を繰り返し、

ひたむきに「キック」と向き合う、五郎丸選手の姿がそこにはありました。

 

ボクは、今、あなたにこの手紙を書きながら、

「ほとんどの事は一進一退なのではないか」と思い改めています。

 

見た目よりも、みんな、それぞれに泥臭く生きているのかもしれません。

 

すべての物事に「意味」を求める必要はないけれども、

ウツくんが身をもって教えてくれている「一進一退」の経験は、

大いに価値がある気がします。

 

辛いけれども、苦しいけれども、投げ出したくなるけれども、

 

他の人の「一進一退」に、

少しだけ寛容になれるかもしれない。

 

他の人の「一進一退」に、

少しだけ寄り添ってあげられるかもしれない。

 

これは、ボクにとって、すごく大切なことのように思います。

 

登っても、登っても、また引きずり降ろされるかもしれない。

「登っても意味がない」と思う日があるかもしれない。

 

でも、迷いながら、悩みながら、葛藤しながら、

階段を登ろうとする。

 

もしかしたら、それを「人生」と呼ぶのかもしれません。

 

また長くなってしまいましたね。

ボクの日記を読ませてしまっているようで、いつもごめんなさい。

 

最後まで読んでくれてありがとうございます。

 

いっしょに登りましょうね、階段。

ゆっくりゆっくり、一歩ずつ。

 

また、お手紙書かせてくださいね。

 

いつもありがとう。

 

令和元年10月25日

心を込めて、ボクからあなたへ