ツマは絵本が好きだ。
ムスメも影響されてか、絵本が好き。
そして、ボクの母は大の「絵本好き」である。
物心ついた頃から、家には絵本がたくさんあった。
自分でも読んだし、何より楽しみだったのが、寝る前に読んでもらうこと。
母を真ん中に、両サイドに弟とボク。
3人で川の字になって寝ていた。
仕事が多忙だった父も、たまーにそこにいてくれた。
もう30年近く前のはなし。
母が絵本を読んでくれている間、
ボクは母の「耳たぶ」をさわり、弟は母の「ほっぺ」をさわる。
さわっていないと眠れなかったのだ。
今でもよーく覚えている、母の耳たぶの感触。
ん?ちょっときもちわるいか。
まあまあ、思い出だからね。
絵本を読んでもらいながら、そのまま寝てしまう時もあったし、
「もっかい、もっかい」と、同じ本を何度も読んでもらったこともある。
そっちの方が多かったかな。
色んな本が思い出に残っているが、中でもこの本。
にしまきかやこさんの、『わたしのワンピース』。
どういうわけか、ボクはこの本が本当に好きだった。
なんでかねえ。理由は全然覚えてない。
母にも何回も読んでもらったし、祖母にも何回も読んでもらった。
なんかいも、なんかいも。
くりかえし、くりかえし。
そして、ついにボクは「ワンピース」が着たくなってしまったのだった。
もう着たくて着たくて仕方ない。
3歳くらいだったかな。
祖母は、「きもちわるい」と笑っていた。
まあ、たしかにきもちよくはない。
でも、どうしても着たかったのだ。
祖母を説得し、お向かいの女の子のワンピースを借りた。
絵本の力って、すごいだろう。
当時、マルコメだったボクのワンピース姿を見て、
祖母は腹がよじれるほど笑っていた。
ボクはもう大満足で「スースーする」という感想を残し、
ワンピースはそっと返却した。
まあ、そのまま、そういった道に進む人生もアリだったかもしれないが、
それきりでしたね。無性にワンピースが着たくなったなったのは。
なんの話でしたっけ。
ああ、そうそう。
絵本の話だった、そうだった。
当時、どうだったかは、あんまりよく覚えていないのだが。
「もっかいよんで」を連発するボクに、母は何回でも付き合ってくれていた気がする。
ちょっと美談になっているかもだけど。
実は、母もそうやって育てられたようなのだ。
絵本だけは、惜しみなく買い与えてもらっていたそう。
たくさん読んできたし、読んでもらったのだろう。
だからか、絵本の事については、母は寛容だった気がする。
ああ、絵本の事について「も」か。
時は今、我が家である。
ツマとムスメたちは、1週間に一回くらいは図書館に通い、
一気に、4~5冊かりてくる。
ムスメがひとりでパラパラ読んでいることもあるが、
ほとんどは、寝る前に読んでいる。
ツマがよく読んであげているが、
調子が良いときは、ボクも読んだりする。
で、ムスメが必ず言うのが、「もっかい!もっかい!」なのです。
ええ、1回でいいやん…。
シブシブ2回目を心をこめずに読む。
するとまた、「もっかい!もっかい!」
サイレンだ、サイレン。
絵本って重いし、寝転びながら仰向けで持ち続けていると、けっこう疲れる。
そして、同じ文章を何度も何度も読む苦痛さよ。
国語の補習を受けてるんか、ボクは。
でもね、何回でも読んでほしいんだよね、ムスメは。
しかも同じ本をさ。
そして、自分の幼少期を思い出すわけです。
ああ、母はよくもまあ文句も言わず、何回も何回も、同じ本を読んでくれていたな。
そりゃあ、ワンピースも着たくなっちゃうよ。
もちろん、絵本がおもしろくて、「もっかいよんで」って言うんだろうけど、
「ねころびながら、よんでもらう」ってのがうれしいんだろうなあ。
絵本は、親子のこころを通じ合わせる、
コミュニケーションツールなのかもしれない。
いつの時代も。
母に「ありがとう」のきもちがじんわり出てきた夜でした。
おくぶかいね、えほん。
今日も、「ウツボク」に来てくれてありがとうございます。
絵本ってさ、けっこうお値が張るのよね。図書館バンザイ。
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