ツマとムスメとウツボク

いきるってたいへん。でも、すばらしい。

「コムスメ、最初の試練」とボク

今日は、いつになく体調の悪い日だった。

朝から布団に潜り込み、じーっとしていた。

 

昼になっても、夕方になっても、それは全然変わらず。

もう、コタツで丸くなるネコのようにね。

 

ムスメたちの泣き声や、生活音が聞こえてくると、

「ああ、ツマに悪いなあ…」

という思いでいっぱいになる。

 

そんな思いでたまらなくなる時は、イヤホンをはめて、

「自律神経、整っちゃう系」の音楽を聴く。

 

それでもしんどい時は、「戦争映画」を観る。

 

感情移入しやすいボクは「戦争映画」が、実は最も「現実逃避」しやすい。

特に「実話に基づく」タイプのやつ。

 

今日は、なかなかにしんどかったので、その最終手段に出ていた。

前から気になっていた、『ハクソー・リッジ』という映画。

「武器を持たない兵士」の物語。

なんかいいよなあ。

 

と、布団に潜り込みながら、ひとり静かに戦場に赴いていた。

 

半分くらい観終わった頃だろうか。

映画の中で、静かになるシーンがあった。

 

すると、明らかにイヤホンの外から、コムスメの泣き声が聞こえる。

21:00を回っていた。いつもなら寝てる時間。

 

ハッとした。

 

そう、今日はコムスメにとって、「試練の夜」だったのだ。

 

どんな試練かというと、

「ママから直接もらえる栄養の終了」だ。

 

試練というと大袈裟だが、でも、ボクにはそう思えた。

 

もう間もなく1歳になろうとする幼児に「お母さんっ子」も何もないが、

もうコムスメは、「ママ大好き」なのだ。

 

まあでも、この時期は大体どの子も、

母親の後追いや、姿が見えなくなると泣いちゃう。

そんなお年頃だろう。

 

お母ちゃん、トイレもゆっくり行けません。

みたいな、一般的にはけっこう大変な時期なのだと思う。

 

コムスメも、まあ、そんな感じなのだが、いかんせん、

ムスメがそういうタイプではなく、なんかもう「デン!」としていたので、

余計にコムスメが甘えんぼちゃんに見える。

 

この12/1がなぜ、コムスメの「試練の夜」になったかというと、

もうツマの身体が限界に達していたのだった。

 

どうやら、授乳中にコムスメが「噛む」らしい。

もう、上下とも可愛らしい歯が生えている。

 

時々、「いたたたたたたたたたたたたたたた!!!!!」

 

というツマの悲痛の叫びが聞こえてくるようになったのは、

この1~2か月くらいだ。

 

絆創膏を貼ったり、左右で使い分けたり、ツマも工夫をし続けたが、

この11月の終わり、ついに、両方とも「故障」した。完全に。

 

経験のあるお母ちゃんたちは、きっとたくさんいるだろう。

 

ボクは、今、こんな風に淡々と書いているが、

もし自分がそうなったら…と想像するだけでゾッとするし、

噛まれようもんなら、もう、余裕で泣く自信がある。

 

まったく、母親とは本当に大変な仕事だ。

頭が下がります。

 

ツマは、キリのいい12/1から「卒業」をしようと決め、三日前くらい前から、

コムスメに切々と「もうすぐおわりだからね」と説明していた。

 

毎晩、寝る前にツマから栄養を補給して、眠りにつく。

それがコムスメのルーティーンだったのだ。

 

そのルーティーンが、今晩からなくなる。

説明されていたとはいえ、コムスメにとっては「試練」なわけだ。

 

そう、話は戻り、ハクソー・リッジから現実に戻ったボクだ。

 

そんな背景を知っていたものだから、こりゃあ大変だと。

1時間以上泣き続けるコムスメをなだめるツマ。

 

そんな後に、洗い物をし、洗濯をし、色んな片付けをするというのか。

ましてや、ボクが一日布団にいたもんだから、

ツマの家事負担はいつもより増えている。

 

「ツ、ツマとコムスメを助けねば…」

 

動けるはずのないボクが、布団から這い出た。

そして、洗濯機のスイッチを入れ、洗い物を始める。

 

そう、1年に1回あるかないかだが、

こういう「火事場の馬鹿力」的な現象が起きることがある。

 

明らかに動けないはずなのに「これはヤバイ」と脳が判断すると、

「お父さんスイッチ」がオンになり、身体が勝手に動き出すのだ。

 

自分が記憶しているのは今までに3回。

 

1回目:新婚旅行の宿泊先のキャンセル料100%を回避するため

(これは「お父さんスイッチ」とはまた違う)

2回目:ムスメが産まれるとき

3回目:コムスメが産まれるとき

 

いずれも、もう自分の体調が限界に達しているときだ。

 

それが、今日は発動した。

すごい久しぶりに。

 

脳内にアドレナリンが放出されるのを感じる。

リミッターが解除された。

 

あつい、あつい、カラダがあつい。

湧き出る父性、ほとばしる汗、漂う加齢臭。

 

別人のようなフットワークで、洗い物を済ませ、洗濯物を干し終えた。

ナマケモノがチンパンジーになるくらいの変貌。

 

気が付くと、コムスメは、ツマに足をさすられながら眠りについていた。

 

「よかった…」

 

なんか、コムスメが無事に産まれてきてくれた時のような気持ちになり、

ちょっと泣きそうになってしまった。

 

しかし、ツマが思いの外、あっけらかんとしているのを見て、我に返った。

 

そう、この2,000字近くにおよぶ物語、

要約すれば、漢字三文字、ひらがな一文字。

 

『娘の断乳』

 

ただそれだけです。

 

感受性が強いのと、すぐに感情移入してしまうもので、

こうやって「ムダに劇的」になるのだよ、ボクはいつも。

 

皿洗いして洗濯物干しただけなのに、なんだこの疲労感。

お得意の「独り相撲」で今日が終わりそうだ。

 

今日も、「ウツボク」に来てくれてありがとうございます。

 

がんばれ、コムスメ。