ツマとムスメとウツボク

いきるってたいへん。でも、すばらしい。

進めラインカー

高校の頃、野球部に所属していた時の話。

 

当時、自分達の学校で、練習試合が行われる日があった。

1年生だったボクは、試合開催の為に、道具の準備やグラウンド整備をする。

 

「ラインカー」をご存知だろうか。

 

今も使っているのかな。

当時、よく体育の授業で先生が地面に白線を引いていた、アレ。

ラインカーを押すと、中から白い石灰が出てきて、地面に線が引けるという仕組み。

 

野球を知らない人でもなんとなくは分かると思うが、野球のグラウンドには、ホームベースから1塁と3塁に向かって真っすぐの線が引かれている。

 

その日、その線を引く役割が自分にまわってきた。

 

初めてのライン引きだったので、おそるおそる、ラインカーを引いた。

下を見ながら、真っすぐになるように、ゆっくり、ゆっくり。

 

でも、どれだけ慎重にラインカーを進めても、一向に真っすぐな線が引けない。

下をみながら、まっすぐ、まっすぐ引いているが、後ろを振り返ると、グニャグニャ。

 

不思議なくらい、グニャグニャ。

 

どうしたもんかなと頭を抱えていたら、チームメイトがやって来た。

事情を話すと、なんだそんなことかとばかりに、

 

「ちょっと見とってん。」

 

と言って、足早にラインカーを走らせた。

 

おいおい、そんな早く進めたらグニャグニャなるやろ、絶対。

そう思ったのも束の間、彼の後ろには見事に真っすぐ線が引かれていった。

 

「ええ!?どうやったん!?」

 

まるで魔法のようなラインカーさばきに驚嘆した。

 

その彼からのアドバイスが、今でも忘れられない。

 

「簡単よ。ラインの延長線上の、出来るだけ遠くに目標物を見つけてん。あのスーパーの看板とかな。あとは、それ目掛けてラインカー走らすだけ。下はね、絶対見たらいかん。とにかく目標物だけ見ながら進むんよ。」

 

半信半疑で、言われるがままにラインカーを走らせてみた。

真っすぐに引けているかどうか、どうしても気になる。

でも、彼のアドバイス通り、下は絶対に見なかった。

 

おそるおそる後ろを振り返ると、ボクの後ろには見事に真っすぐな線が続いていた。

あの時の感動と衝撃は、忘れられない。

 

印象に残ったもう一つの理由は、人生にも当てはまると思ったからだ。

 

日々の生活の中では、どうしても足元を見る。

ちゃんと歩けているか、道をそれていないか。

 

それはそれで、大切なこと。

 

でも、遠くに自分の目的地が見えていたとしたならば。

足元は気にせず、ただそれを見つめながら歩みを進めればいい。

 

決して簡単なことではないけれど、その道は真っすぐになっているはずだ。

 

今日も、「ウツボク」に来てくれてありがとうございます。

 

 久しぶりに体育の授業を受けたくなりました。