ウツと知り合ったのは、
もうまもなく20歳になろうとしていた頃だったと思う。
元々、お互いのことが気になってはいたが、
正式にアプローチを受けたのは、
ボクが大学を休学して、2年間のボランティア活動に従事していた時だ。
そのボランティア活動に対しては強い想いがあり、
高校生の頃からずっと準備をし、備えてきた。
が、
意気揚々と出発し、
任地に到着してボクを待っていたのは、
ウツだった。
出待ちか…。
それからウツとの共同生活が始まった。
ボクが思い描いていたボランティア活動は、
ガラガラと崩れていった。
たくさん時間と労力と想いをかけて準備してきたもの。
人生で初めて、自分なりの大きな挫折を味わった。
生き地獄な毎日が辛くて辛くて、
自分は世界で一番哀れなヤツだと思わざるを得なかった。
10年以上経つが、今でも当時の事はよく覚えている。
当時は、こんなにウツと長く付き合うつもりはなかったので、
一日も早く別れるために、自分に出来る努力を必死で続けた。
薬を頭からかけたり、
とにかく無視をしてみたり、
ウツに嫌われるためなら何でもした。
でも、
ウツは諦めなかった。
ボクへの愛情は想像以上に深いものだった。
そのうち、ボクは疲れてきた。
ウツと付き合うこと。
生きること。
自暴自棄になった。
しかし、ボクをそんな状態にさせる為に、
ウツはボクに近づいたのではないと言うのだ。
よく言うわ。
オマエのせいで、ボクの人生はめちゃくちゃだ。
どうしてくれるんだよ、ホントに。
すると、ウツは泣きながら小さい声で、
「…もう少し、もう少しだけ、ゆっくり生きてみて…」
と、ささやいた。
最初は言っている事がよくわからなかったが、
ウツと時間を共にするようになり、
その意味が少しずつ分かり始めてきた。
若さもあったが、
今まで自分は走り続けてきた事に、
改めて気付かされた。
スピードを求め、
成功を求め、
加速していった。
しかし、それと引き換えに大事なものを見失っていた。
景色を見ること、
周りの人を見ること、
そして、
自分のこころを見ること。
自分が追いかけていたものも大切だが、
ウツがボクに教えようとしてくれたものは、
もっと大切に思えた。
それから、
少しずつ、少しずつ、
じっくり、じっくり、
時間をかけて、
ボクは、崩れた自分のピースを埋め始めた。
ウツといっしょに。
その作業は今も続いている。
これから先も、ずっと続くだろう。
生きていく上で、大切なものはそんなに多くない。
ウツがそう教えてくれた。
今は、ボクも本当にそう感じる。
ウツはボクが思う程、嫌なヤツじゃなかった。
「恩人」と言うと、やせ我慢のように聞こえるが、
でもやっぱり、恩人なのだ。
ボクらの日々の暮らしの中には、
皆に嫌われているモノ、
皆に嫌われているヒトがいる。
でも、
見方をちょっと変えてみたり、
付き合い方をちょっと変えてみると、
実は、自分にとって、とっても大事な存在だったりする。
一つの面だけではなく、
いろいろな面から見ようとすると、
立体的に見えてくるのだ。
つくづく難しいが、
つくづく大切だと、
この記事を書きながら改めて思っている。
今日も、「ウツボク」に来てくれてありがとうございます。
要は、
「パラダイムシフト」
って言ってみたかっただけです。