ツマとムスメとウツボク

いきるってたいへん。でも、すばらしい。

「クシャクシャになった花」とボク

自宅の近くに、ムスメと同学年の男の子がいる。

ツマが彼のお母さんと意気投合し、ムスメと彼も、頻繁に遊ぶようになった。

 

数か月前から、幼稚園に入園する前の「プレ幼稚園」にも、

同じ幼稚園、同じ曜日に通っている。

 

先日、プレの日にどうやら小さなケンカをしたらしい。

 

彼は、自分が作っておいた粘土の作品を、

少しの間そのままにして、一度、その場を離れた。

 

そこに、たまたまムスメがやってきて、「おっ、粘土やんけ」と遊び始める。

もちろん、彼が作った大切な作品だとは知らず。

 

そこに彼が帰って来る。

当然、「おいおいおいおい、それオレが作ったんやぞ」と。

 

「いやいやいやいやいや、そんなのアタシ知らんから」

 

バトル勃発。

 

実際、ボクはその場にいなかったので詳細は分からないが、

まあ、もう本当によくあることだろう。

 

2歳児の小競り合いなんて、むしろ微笑ましい。

プレから帰宅したツマとムスメが、こんな事があったのよと話してくれた。

 

昼ごはんを食べ、昼寝をした後、ムスメは「粘土」で遊び始めた。

小麦粉で作る、「小麦粉粘土」だ。

 

ツマが、ときどき準備してくれている。

食紅などで色を付けると、あざやかになって綺麗だ。

 

コネコネ、コネコネ、いつものように黙々と粘土で遊ぶムスメ。

すると、ふいにこう言った。

 

「ねんどでぎょーざつくって(彼の家に)もっていきたい」

 

そう、その日のバトルのきっかけは、彼が粘土で作った「餃子」だった。

ムスメは、どこか気持ちの中にスッキリしないものがあったのだろう。

 

時間はもう17:00になろうとしていた。

ツマは夕飯の支度をしてくれている途中。

 

しかし、ツマはムスメのその気持ちが尊いと感じたのだろう。

エプロンを外し、彼のお母さんに連絡をした。

 

彼のお母さんも、恐縮しながらも、ムスメの気持ちを尊重してくれたようだった。

 

一生懸命作った餃子(最終的に団子になっていた)を、

かわいくパックに詰めて、さあ出発。

 

ムスメを後ろに乗せ、ツマは自転車を走らせた。

 

20分ほど経った頃だろうか、ツマとムスメが帰って来た。

少し、はればれとした表情に見える。

 

ムスメが「これみて」と、手に握りしめていたものを見せてくれた。

手の中には、クシャクシャになった小さな花がのっていた。

 

いつも、公園でドングリやら草やら花やら実やらを採集してくるので、

「みつけたの?」と尋ねると、

 

「んーん、もらったの」

とムスメは言った。

 

ツマから話を聞くと、どうやら、

ムスメが「ピンク色の小麦粉粘土餃子」をデリバリーしに来ると聞いて、

彼は、自宅で育てている花をひとつ、ムスメのために準備していてくれたらしい。

 

ムスメは大事にそれを握りしめていた。

 

なんてことない、日常のやり取りかもしれない。

でも、ムスメの気持ちがなんとなく嬉しかったし、

彼の、かわいらしい思いやりがなんとも微笑ましかった。

 

そして何より、自分のやっていたことの手をすぐに止めて、

ムスメの気持ちに応えようとしてくれたツマに、

「母親」を感じた。すごいなと思った。

 

彼は、ムスメが届けた「ぎょーざ」を、

「これ、きにいってるの」と言い、寝るときに枕元に置いてくれているそうだ。

 

ボクは、なんだかとても大切なことを教えてもらった気がした。

 

今日も、「ウツボク」に来てくれてありがとうございます。

 

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ツマが、水に浮かべてくれた。心のこもった花は、クシャクシャだって素敵だ。

 

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